最遊記
「ああ、姫様、またそちらにいらしたのですか。」
「二郎神。」
「そうやって身を乗り出して覗いていると危ないですぞ。さあそろそろ宮に戻らねば」
「うん、もう少しだけ」
「はあ。池の向こうには何がお見えになっているのですか?」
「誰だかわからないけれど、旅をしてるの。西に。」
「ほう」
「太陽みたいな髪の色で、手が届きそうで」
どぼん。
”届かない”という言葉は聞こえないまま、落ちた。
あれほど危ないと言ったのに。
池に落ちたの。
こぽこぽと、吐きだした息が音を立てているけれど不思議と呼吸ができる。手を伸ばせばあの太陽に届く気がしただけなのに。暗い、暗い、みなもには蓮の花があったはずなのに見えなくて、くらくて、どんどん沈んでいく、私のからだ。
でもね、不思議と太陽に近づいてるような気がしたの。あたたかくて、誰かに包まれてるみたいで。
「二郎神」
「観世音さま、」
「あいつは行ったのか」
「どうしましょう、姫様が池に、」
「行かせてやれよ、あいつが望んだことだ」
願わくば彼女の旅にひかりが訪れますよう。
「二郎神。」
「そうやって身を乗り出して覗いていると危ないですぞ。さあそろそろ宮に戻らねば」
「うん、もう少しだけ」
「はあ。池の向こうには何がお見えになっているのですか?」
「誰だかわからないけれど、旅をしてるの。西に。」
「ほう」
「太陽みたいな髪の色で、手が届きそうで」
どぼん。
”届かない”という言葉は聞こえないまま、落ちた。
あれほど危ないと言ったのに。
池に落ちたの。
こぽこぽと、吐きだした息が音を立てているけれど不思議と呼吸ができる。手を伸ばせばあの太陽に届く気がしただけなのに。暗い、暗い、みなもには蓮の花があったはずなのに見えなくて、くらくて、どんどん沈んでいく、私のからだ。
でもね、不思議と太陽に近づいてるような気がしたの。あたたかくて、誰かに包まれてるみたいで。
「二郎神」
「観世音さま、」
「あいつは行ったのか」
「どうしましょう、姫様が池に、」
「行かせてやれよ、あいつが望んだことだ」
願わくば彼女の旅にひかりが訪れますよう。
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