文章置き

written by古川優菜twitter:)http://twitter.com/fullkota思いついたときに思いついたことをつらつら書くので更新は不定期。
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twitter:)http://twitter.com/fullkota
思いついたときに思いついたことをつらつら書くので更新は不定期。

尊さん

カラン、とドアが開く音が聞こえて反射的に、いらっしゃいと挨拶しかけたがまだ開店時間ではない。女性の小柄なシルエットと差し込む太陽の光に目を細めた。閉店しているのにドアが開いているのはこのバーに酒を飲む目的以外の来客がいるからだが、ウチに幼女はいても女性はいない。
「堪忍な、まだ開店時間ちゃうね、んよ」
俺の声を無視して入ってきたその女性は予想外にも甚だしい人物だった。ぴしり、と体がかたまるのが自分でもわかる。

「ただいま」
少し大人びたけれど彼女のほほえみは4年前と変わらない。

・・・

「いつ帰ってきたん!?尊には帰ってきたこと言うてるん!?」
「ふふ、そんな慌てて聞かなくても」
「あ、すまんすまん。・・・にしてもえらい別嬪さんになったなあ」
「…尊にちくっちゃうよ?」
「ああそれは堪忍してくれ」

そんなんされたら尊の炎に焼き殺されてしまうわ。

・・・

「ね、紅茶ちょうだい?」
「はいよー。ミルクティやろ?」
スツールに腰かけ、カウンターに頬杖をついて微笑む彼女は4年ぶりだとも感じさせない。しかし時は流れるもので4年前には店に出す用以外の飲み物は彼女の紅茶だけだったが、いつのまにやら紅茶にコーヒーにジュースに。思わず深くため息を吐いた。
「なあに?」
「いや、なんでもない」

こみ上げてくるさまざまな感情を悟られないように、カップに熱い紅茶を注いだ。

・・・

カラン、再び店のドアが開いた。きっと彼女がここに来た目的人物が帰ってきたのだろう。4年前にはいなかった、幼女を連れて。
「尊、アンナ、おかえり」
2人に声をかけるとカウンターで紅茶を飲んでいた彼女は少し迷った表情をしてから振り返った。俺にとっても尊にとっても予想外の来客だ、あまり感情を表さない尊が目を見開いた。そんな異変にアンナも気が付いたのか尊の様子を窺うように顔を見上げた。
「ただいま、尊」

俺からは、彼女の表情は見えない。

・・・

彼女がすっと立ち上がると同時に、アンナも握っていた尊との手を解いた。尊から離れるアンナを見て彼女は尊の元へ歩んでいった。無表情の中、幽かに不思議そうな表情をしているアンナと目が合う。じっとしとき、と言わなくても敏いアンナは気づいているだろう。小さい体だが器用にスツールに腰かけたアンナに、「なんか飲む?」と声をかけた。

・・・

二歩分くらい。微妙な距離感を保っているのを崩したのは尊だった。彼女の領域に一歩踏み入れ、頭を自分の体に寄せた。額がこつん、と尊の体にあたる。

「おかえり」

かかっている音楽に紛れてしまうような声を聴いたのはただ1人。

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