文章置き

written by古川優菜twitter:)http://twitter.com/fullkota思いついたときに思いついたことをつらつら書くので更新は不定期。
written by古川優菜
twitter:)http://twitter.com/fullkota
思いついたときに思いついたことをつらつら書くので更新は不定期。

草薙さん

大晦日、年明けを迎えようとする23時。最近大人しかった連中も今日は騒がしく、バーの調度品を壊しかける度に怒鳴りつける何故か懐かしい1日を終えようとしている。そこに尊や十束の姿はないけれど。ふと、気づいた。彼女がいない。
「おい、あいつどこにおるん?」
誰にでもないそこにいたメンバー全員に尋ねると一瞬だけ場が静まり返った。
「そういえば見かけないっすね」
「いつからいなかった?」
「いや、知らねえ」
「ていうか今日来てたか?」
「いや年越しそばは一緒に食ったぞ」
「アンナに聞くか?」
「いや、もう寝てんのに起こすのもかわいそうや。やめとき」

ふう、と長く息を吐くと磨いていたグラスをその場に置いた。
「さがそか」
なんとなく、嫌な予感がする。「おう」「はい」「わかりました」とそれぞれの返事をして皆、外へ駆けぬけていく。ああ、何もなかったらええねんけど。俺も探しに行こか。コートに腕を通した。

*-*-*

街の中を走り回って、初め寒かった外の空気もコートを脱ぎたくなるくらいに体が熱くなってしまった。息切れした吐息は白い。あいつ変な気起こしてへんやろな。くそ、こういう時、尊やったら―――あ。いつも日向ぼっこする公園に常連の喫茶店によく呑んだ屋台。いろいろ探したけど1つだけ、探していない場所がある。

鎮目町の外れ、尊がいる場所だ。

*-*-*

墓場に続く階段を登って、もうそろそろ体力の限界、ってところでやっと見つけた。俺たちが必死で探していた彼女は墓の前で体育座りをするように膝を抱えて丸まっている。顔は、見えない。いつからそこにいたのだろうか。とにかくタンマツで「見つかった。」と皆に連絡をいれてから、彼女に近づいた。

「なにしてんの」
「…草薙さん」
「急におらんなって、心配したで」
「…ごめんなさい。どうしても、あの空気がつらくて。」

それから、尊に会いたくて。
そう聞こえた気がした。泣いた痕は見当たらない。そのことに少しだけ安堵して、長時間外にいて冷たくなった体を引っ張り上げて「帰るで」と声をかけた。

「うん。―――またね、尊」

立ち上がったが俯いている彼女の手を繋ぐと想像以上に冷たい。ぎゅっと握ったけれど握り返してくれることはなかった。手を引くようにして、墓場を後にしたけれど、きっと彼女の心は未だ尊の墓の前にあるのだろう。


雪が降りはじめる、鳴り響いていた除夜の鐘の音が止んだ。

(2012年、相変わらず不定期な更新でしたがたくさんのアクセス有難うございました。来年もよろしくお願いします。よいお年を!)

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